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 名のある血統は成虫ペアで、目標に応じたペアを手に入れよう

 前回の最後に幼虫1匹あたりにかかる飼育費用のことを書きましたが、ここ最近新しいお客様からいろいろな生体・血統の質問を受けます。 同じような内容の質問がかなりありますので代表的なものを取り上げまして私の見解をお話します。

 クワガタ飼育も一つの趣味として定着しまして、投機的意味合いを持つものもほとんどなくなり値段も落ち着いたこの2年ですがそれも影響してか、沢山の方々がいわゆる“血統物”の生体を飼育するようになりました。 飼育1年目の方でもそのような類の血統ものは十分手が届く値段で買えますのでいろいろな有名血統を飼育していらっしゃる方も沢山いらっしゃるでしょう。
 ここ最近の話ですが、初めてのお客様から“超阿古谷のような血統物を購入したいのですが・・” という相談の電話もかなりいただいております。 確かに最初はある程度手ごろな手の届くものから入門するのが無難ではあるのですが、ここに落とし穴が・・

 まず第1に以前にも上級者講座のほうで書いておきましたが“幼虫買い”はやめておくべきです。 理由は沢山ありますが、大きく喜べることは少ないでしょうし先が長い(幼虫がめでたく成虫まで成長してもブリードできるまでに半年はかかりますし、そのブリードが100%成功すると言うことはありません。 さらにそこから生まれる幼虫が成虫になるまでに1年弱かかります。) ので初心者・ビギナーの方はもちろんある程度経験を積んでいる皆さんにも私は勧めていません。

 やはり成虫を自分の目で見て触れて出来れば兄弟も見せてもらってその血統の大体の線を自分で確かめてから購入すべきでしょう。  販売する側も名の知れた血統の幼虫を販売しても、実はメリットよりもデメリットのほうが多いのは分かるはずですので普通は販売しません。  当方の血統での具体例をあげますと、たとえば“おうち家A血統の82mmラインや超阿古SG血統など成虫で良いものになれば6桁の値段は付きます。 そのような素質のある血統の幼虫を手放してしまうと自分のところに素晴しい種親が残せません。 これが幼虫を販売しない第1の理由です。

 第2の理由は沢山幼虫が出てきて飼育しきれないような場合には稀ですが3令ペアで販売したこともありました。 成虫ペアよりは安いので売れますがその後が不安です。 何故かと申しますとそのような素晴しい血統の幼虫ですから当然購入されたお客様はそれなりの個体が生まれてくると期待されます。 ところが、経験を積んでいらっしゃる方であれば十分ご理解いただけるでしょうが、実際に素晴しい個体の生まれてくる確率はどれほど素晴しい血統でも全体の3割あればよいほうです。 全体の1割〜2割は本当にこれがあの血統の成虫なの?? という事もあります。 ですからそうなった時が販売する側には怖いのです。  高いお金を払って手に入れた幼虫がそれに見合う成虫にならなかった時には販売者側の信用はかなり下がってしまうでしょう。  逆に幼虫を販売するメリット・・これは悪くしか書けませんが“成虫になるまで分からない”からでしょうね。
  私もつい最近カブトムシの幼虫で見事な詐欺にあいましたが販売者側にすれば“幼虫が成虫になるまでは分からないからその間に行方をくらますことも出来る!”訳です。 この類の詐欺事件はカブトムシに限らずジュダイクスミヤマやらサタンなどの幼虫販売で被害にあわれた方も沢山います。 同じようなことはオオクワガタやホーペの幼虫でもやろうと思えば簡単に出来ます。 

 いまご紹介したような理由からまずは“成虫ペアで入門して下さい”と言う結論になるのです。

 次はどの程度のものを種親にするか? という初級から中級に進みつつある皆さんの悩むところを具体的に数字を挙げてお話しましょう。

 ちょうどつい最近まで当方のホームページ開設5周年企画にて超阿古の各系統の成虫ペアを販売していました。 平均的な値段は¥30,000くらいでしたがこれらの中の成虫ペアを手に入れてブリードしていただいてどれくらいのサイズまで誕生しうるのか? と言いますと大きくて78mmあたりまでです。  兄弟全体の平均値が73ミリ前後でしたから標準偏差の平均を取りましてプラスマイナス4ミリあたりと換算して大体69ミリ〜77ミリまでの間のサイズでオスが誕生してくることでしょう。 このあたりの数字は長年の経験に基づいていますのでかなり正確です。 例外的に78ミリくらいの成虫や68ミリくらいのオスも誕生するでしょうが割合としましては5%以下の確率でしょう。  

 そのような経験に基づく知識がありますので“大きくて太い個体(76ミリ以上であご幅も5,7ミリ以上くらいでしょうか・・)を沢山作りたい” というような具体的な目標をあげて相談してこられるお客様には私は必ず次のようにお話します。 “超大型個体を狙うのであればその系統で3世代続けて80mm以上のオスが誕生している血統で、種親もお金はかかるのですが76ミリ以上あるペアを最初に手に入れてください。”と言う話を必ずします。  

 世の中には有名な血統が数多く存在しますが、3世代以上に渡って80mm以上が誕生している血統はそれほど数多くは存在しません。  当方では超阿古SG血統やE血統、さらにおうち家A血統にAL血統がおりますが3世代続いていても80mmUPはたやすくは作れないのです。   

 ここで話題をお金の話にしますが、80mmを目標に72ミリ・46ミリの種親ペアを\20,000
で購入したAさんと78ミリと50ミリのペアを¥140,000で購入されたBさんを例に挙げて話を進めます。 (同じ血統で同じ飼育条件で飼育を続けるものとします。)

 まずブリードをして30匹の幼虫が摂れたと仮定するとそれらの幼虫を成虫にするまでの餌代は全く同じとして1匹¥2000程度ですから餌代総額はどちらも¥60,000です。 飼育期間はおよそ13ヶ月くらいでしょうから1ヶ月の電気代を温度管理をすると仮定しまして約¥80,000、これで飼育にかかる費用は1ペアあたり¥140,000となりました。

 Aさんの最初からの費用・・・・・¥160,000

 Bさんの最初からの費用・・・・・¥280,000  

 当然のことながら最初のペアの値段の差がそのまま残るのですが・・・ さてどのような虫たちが生まれてくるでしょうか? ここにポイントがあります。 飼育条件に差が全くないのは当然ですが結果に大きな違いが出てくるのもこれまた当然。  Aさんの購入したペアから生まれてくる個体は先ほど上で書きました標準偏差の4ミリあたりでしょうから66ミリ〜74ミリあたりの中に大体が納まります。 75ミリを超える個体も出てくることもありえますが確率は低いです。 それに対してBさんの方では同じ標準偏差を当てはめると74〜82mmの間におさまってきます。 ただ82mmという数字は滅多に出てきませんから80mmUPも十分出てくる、くらいでしょう。 それでも76,7ミリくらいのオスは何匹も生まれてきます。  Bさんはおおむね満足した結果を得られるでしょうがAさんはほぼ不可能です。 そこでAさんはもう1世代続けてブリードをすることになります。 75ミリくらいの一番大きなオスと48,9ミリあたりの一番大きなメスを交配して同じようにまた飼育を続けます。

  ここで更に1年〜1年半が余計にかかりますし、幼虫の餌代、電気代など同じように¥140,000+アルファが必要となります。  これは余談ですけどこのプラスアルファが結構な金額にもなりえます・・。  Aさんはそこそこの結果を得るのにBさんよりも1年以上余分な時間とお金がかかってしまうのです。 計算していただければ分かってもらえますが超大型を狙うのであれば74mm以下のペアからのスタートは圧倒的に不利なのです。 75,6ミリあたりまでの個体を作出することに目標を置いて飼育を楽しんでいらっしゃる皆様にはあまり関係のない話題ですが、超大型個体を狙っているのであれば、まずそれなりの種親を手に入れて出来ればアウトラインで飼育する大きなメスも同時に手に入れてください。  最初にかかる費用はかなりの金額になるのですが長い目で見ると実は最初に大きな種親を入手して始めるほうが時間も費用もかかりませんし得られる満足度にも違いが生じてくるのです。

  ちなみに当方で販売している生体ペアの売れ行きにも上で書いてきた内容がものの見事に反映されています。 今年販売した成虫ペアを例に挙げますと、超阿古B血統は真ん中の価格帯のものが残って大きくて値段の高いペアと価格の安いペアが売れました。 

SG血統などはホームページで販売する前に82mmを残してほとんどが売れてしまい残っているのは一番小さな73ミリのペアだけです。 SG血統を購入される方は全員の方が80mmUPの格好の良い個体の作出を目指しているからでしょうが大きなペアから売れてゆきました。 経験を積まれている皆さんはそのあたりが十分にお分かりなのでこのような売れ方をしているのだと判断しています。

  いままで書いてきた内容をまとめますと・・・

 飼育に目標を持ってやるのは大切なことですが、その目標を達成するためにはどうすべきなのか?   単に楽しむためだけであればこだわりは必要ないのですが、どんな幼虫でも成虫にするまでにかかる費用に大差は生じませんから、最初に自分の目標をある程度決めてからそれに応じた成虫を手に入れてブリードするほうが長く楽しめますし得られる満足感にも大きな差が出てくるでしょう。 初級から中級に進もうとする皆さんはあれもこれも、という初心者状態からは脱しつつあるはずですからそのあたりをよくお考えいただければよりいっそう充実したクワライフをおくっていただけるでしょう。