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 上級者講座 第1講

 すでに中・上級者講座がありますので、今回から連載します上級者講座では今までに触れてこなかった部分についてより具体的に説明を加えてゆくつもりです。 第1講は添加剤の効用について昨年から始めました様々な実験結果もお知らせしながら話を進めてゆきましょう。

 昨年より私と弟子のマニア氏の飼育する様々なドルクス系の幼虫に今まで当方で使用・販売しております各種添加剤に加えまして有機・無機系の新しい添加剤をいろいろと実験に使いましてどれくらい違いが出るのか?についての実験・考察を行いました。 まだ結果が全て出揃っているわけではないのですが、公表して支障のない部分につきましては順次まとめてゆきますので飼育の参考にして下さい。

 最初にお断りしておきますが、実験にはすべて当方の製作しております菌床を使用しております。他社製品は一切使っておりませんので皆さんがこれから述べる内容をそのまま真似していただいても同じようになるか?と問われても、使っている菌床・飼育環境・飼育する虫の種類・血統など様々でしょうから当方にはわかりかねます。 言える事は“工夫する方が好結果につながる” これは間違いないと思います。上級者講座をご覧になる皆さんがそれぞれご自身の出来る範囲で工夫されるのがよろしいかと思います。

 さて前置きが長くなりましたが早速、第1講:添加剤の効用について話を始めましょう。
添加剤飼育につきましてはすでにご存知の方も多いと思うのでその効用については説明する必要はないかもしれませんが、その第1の目的は“飼育する虫の素質を最大限に伸ばす”事にあります。 添加剤飼育につきましては賛否両論あるのは承知の上ですが、ここではその是非を論じるのは無意味ですのでそれにつきましては触れずにおきます。
 ここ数年の間に飼育技術もかなり向上し、虫にもいわゆる“血統”のようなものが存在するのは否定できません。いわゆる“良血統”と呼ばれる虫が巷に沢山出回っております。もちろん私も馬に限らず虫にも血統は存在すると思います。(でなければ当方のホームページに良血統・超大型血統のコーナーは作れません) このような素晴らしい血統の元になった親虫が素晴らしかったか?と尋ねられると私はたいていの場合、“いいえ、あまりわからなかったですよ”と本当のことを言います。 広東省・九連山にしても大安にしても元々は30mm台のメスから生まれた子供です。

 今でこそ野外採集されたメスの素質を見分ける目もそこそこ身に着きましたが7、8年前にそのような眼力があったかというとなかったと思います。私が当時考えたのは、“人間にも馬にも血筋は明確に存在するしその素質を伸ばす方法論も確立されているから虫にもそういう方法論があり、それを発見し確立すれば他の飼育・販売業者とは一線を画すことが出来るから探求してみよう”という事でした。 当時はやっと菌床飼育がそろそろ普及し始めようか・・・と言う頃でまだオオクワガタの75mmクラスが\100,000以上していた頃でしたので添加剤飼育を始めていたのは愛知県のKさん(これは後から知ったことです)だけだったようです。 そのような思いつきでキノコ関係の書籍・文献を読みまくり、自分で今でこそ一般的になっているトレハロース・麦芽・コーン・・・あちこちから会社名義で取引を申し込んで添加剤の元になるものを買い付け、さらに予備校の講師時代の教え子で薬剤師をやっている子達や理系の大学院に進んでいる子達に頼んでいろいろな薬剤を取り寄せました。 それらの物質をいろいろと調合し加工を重ねてスーパーモンスターが出来上がったのが5年前でした。

 スーパーモンスターを世に出す前に当然のことながら実験を繰り返していましたが、その時点での結論としては、“添加剤飼育は虫の素質を暴き出すことが出来る”というものでした。 分かりやすく説明すれば同じ菌床飼育をしても栄養のないホダで作ってあるような菌床と良質のオガ粉・添加剤をふんだんに用いた菌床の2種類を用いてWF1の幼虫を育ててみると一目瞭然の結果となります。 販売する以上、どのようなお客様が使われても80%以上の方のところでそれまで以上の結果が出てこないことには売れないでしょうし長続きもしないでしょうから、様々な条件でいろいろな虫を使って実験を繰り返しました。 ここで結果として第一の目的が達成できそうなことが判明しましたので、まずは自分の飼育する虫で結果を出してから公表して販売することとなりました。 自分の飼育する虫では当方のホームページの写真館にもその画像が残してありますのでご覧いただければ納得していただけるでしょうが、信じていただくに十分な結果も出ました。 またお使いいただいているお客様の所でも毎年好結果が出ておりますので喜んでいる次第です。

 さて話を本題に戻しまして、添加剤飼育は虫の素質を引き出し伸ばすことに間違いはないのですが、場合によっては限界を超えて大きく成長する幼虫も出てきます。 その結果、途中で死亡したり、生まれてきてもバランスの悪い個体も出てくるもの事実です。 ただ、私の持論としまして素質のない虫はいかにすばらしい環境とえさを用いて飼育しても絶対に伸びません。私の飼育する虫においての具体例は貴州・チベット・・・などいくらでもありました。せいぜい72,3mmで頭の幅が長さについてこないのです。反対に優れた素質を持つものは、WF1の平均羽化サイズが76mmを超えてくるようなものも少数ですが存在します。 当方は業者、飼育と販売のプロですので当然いろいろなお客様に満足していただけるものを数多く取り揃え、またブリードについての細かな質問にも答えられるように準備し、技術と結果を見ていただいて納得していただかねばなりません。 つまりお客様よりは常に先へと進み、技術を提供・説明できないと説得力に欠けるものとなってしまいますので、虫の持つ素質を伸ばし、判断する能力は必要不可欠だったのです。 その意味合いにおいても添加剤飼育を行い虫の持つ素質が暴きだせるのは欠かすことのできない技術となっております。 この方法論を用いて当方の所有するさまざまな良血統・超大型血統が発見できましたし、その後にもアウトブリードを行ったりしましてそれぞれの血統の虫に磨きをかけております。

 さて、添加剤開発の話が長くなってしまいましたが、去年からさらに様々な添加剤を使いまして実験を行ってきております。 ずいぶん前にもボヤキで書きましたが、頭の幅・あごの幅だけを大きく出来ないか? という素朴な疑問がわきあがり、まずはやってみよう!ということで、Mg、P、Caなどそれこそありとあらゆるものを使って実験を重ねてきました。 基本的にはスーパーモンスターとミネラル系の添加剤を主流に混合して使いました。 また30%という普通では作成不可能な含有量のものも作り使いました。 その結果を一言で簡潔にまとめますと、“添加剤で虫のある部分だけを大きくするのはほぼ不可能。もしそういう事例が頻繁に出てくるようであればそれは添加剤の効用でなく血統である。”ということになります。

 添加剤の内容につきましては細かく公表すると真似をされる可能性がありますので細かくは書きませんが、アミノ酸系・無機系・重金属・・・いろいろと使っての結果です。 ただ血統の良い虫につきましては一部例外とも言える太さ・大きさのものも誕生しておりますので、添加剤の効用が全くないとは言い切れません。 しかし血統的背景の良くない虫については長さは出ますが、太さが出ませんでしたので、やはり“前提条件として血統的背景ありき”となるようです。 そのような血統的背景のある虫の飼育過程において例えばスーパーモンスターを使った場合には頭の幅、さらに重さ、大きさは出せます。 私が一人であれこれ言っても説得力はありませんが、お客様の声としてそのような声も聞いておりますし、幼虫自慢のコーナーにも沢山の皆様が投稿してくださっておりますのでマイナスに機能することはないでしょう。

 そろそろ第一講のまとめに入らねばなりませんね・・・。 添加剤の効用、それは“飼育する虫の素質を明らかにし、磨きをかける働きをするものである”とい言う事になるでしょう。 飼育する幼虫のステージの違いにより使い分ける必要があるのは中級者講座でお話したとおりですが、ご自身の飼育環境・飼育されている虫の血統に応じて添加剤と菌床を使い分けることでさらに良くなる可能性はあると思います。

次回の上級者講座では“太さ”を作り出すには?についてお話を進めてゆきましょう。

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